人口減少が進む過疎地域の移動課題に「第3の選択肢」
山梨県道志村のNPOが、行政やボランティアだけに頼らない持続可能な移動の仕組み「道志村モデル」の実証に挑戦。11月15日からクラウドファンディングを開始。
特定非営利活動法人 道志村移動サービス(所在地:山梨県南都留郡道志村、理事長:荒木 茂)は、人口減少や高齢化が進む地域の移動課題に対し、住民・地域事業者・全国の支援者が協力して移動を支える新たな仕組み「道志村モデル」の構築を進めています。
2027年4月から1年間の実証実験を計画しており、その実現に向けた資金を募るため、2026年11月15日からクラウドファンディングを開始します。
道志村モデルが目指すもの
「車がなくても生活できる道志村へ」
これが、私たちの活動の出発点です。
山梨県道志村は、豊かな自然に囲まれた山間の村です。東西約28kmにわたって集落が点在し、鉄道はなく、公共交通は主に路線バスに頼っています。しかし、バスの運行は1日数本に限られ、赤字を村が補填しながら維持している状況にあり、運行本数の縮小や路線の廃止も懸念されています。
また、通院や買い物などの日常生活は村内だけでは完結せず、近隣の市町村への移動も欠かせません。そのため、自家用車への依存度が高く、車を運転できなくなることは、日々の暮らしだけでなく、人との交流や社会参加の機会を失うことにもつながります。
私たちが目指すのは、単に高齢者の送迎手段を確保することではありません。
子育て世代の送迎、外国人就労者の移動、地域の飲食店や行事への参加など、世代や立場を問わず、誰もが利用できる移動の仕組みをつくることです。
移動の自由を確保することは、暮らしを守るだけでなく、地域の産業やコミュニティを維持することにもつながる。
私たちは、そのように考えています。
人口減少と地域交通の課題
人口減少が進む地域では、公共交通の利用者が減少する一方で、高齢化によって移動支援の必要性が高まっています。
従来、こうした地域の移動を支えてきたのは、主に行政による財政支援と、地域住民によるボランティア活動です。
財政的な余力のある自治体では、オンデマンドバスなどの新たな交通サービスを整備することも可能ですが、人口規模が小さく財政的な制約の大きい自治体では、同様の移動インフラを独自に整備し、維持し続けることは容易ではありません。
一方、住民同士の助け合いによる移動支援も、無償または低額の謝礼による活動に支えられることが多く、担い手の高齢化や特定の人への負担の集中など、継続性に課題があります。
つまり、行政が多額の財政負担を続けるか、地域住民が善意と自己負担で支えるか。 従来の方法だけでは、人口減少が進む地域の移動を持続的に確保することが難しくなっています。
こうした状況は、道志村だけの問題ではありません。
全国の中山間地域や過疎地域でも、自治体の財政力や住民ボランティアの負担に過度に依存せず、地域の移動を維持できる新たな仕組みが求められています。
行政やボランティアだけに頼らない「第3の選択肢」
道志村モデルが提案するのは、そのどちらか一方に依存するのではなく、地域の内外にあるさまざまな力を組み合わせ、継続的に移動を支える「第3の選択肢」です。
利用者、ドライバー、地域の事業者、全国の支援者が、それぞれの立場から参加できる仕組みをつくります。
ドライバーには、単なる無償の奉仕ではなく、活動に対する送迎手当を支給することで、参加しやすく、継続しやすい環境を目指します。
また、地域の事業者には協力事業者として参加していただき、移動サービスを地域経済の活性化にもつなげていきます。
全国の支援者からの寄付や協力も取り入れ、地域の人口規模だけに左右されない運営を目指します。
道志村モデルの具体的な仕組み
道志村に最も適した移動サービスとは、どのようなものだろうか。
この疑問から、さまざまな制度や仕組みを調べ始めました。
その一つが「自家用有償旅客運送」です。しかし、道志村は東西約28kmにわたる細長い村で、通院や買い物などの生活圏は隣接する市町村にも広がっています。
移動距離によっては、タクシー運賃の約8割を目安とする対価でも、利用者の負担が1万円近くになることが考えられます。これでは、日常的に利用することが難しいのではないかと考えました。
そんな中で着目したのが、国土交通省の「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」です。
このガイドラインでは、利用者から受け取る金額をガソリン代や保険料などの実費の範囲内とし、一定の条件を満たす場合には、利用者とは直接関係のない第三者からドライバーへの送迎手当の支給が認められています。
これなら、利用者の負担を小さく抑えながら、ドライバーにも適切な手当を支給できる可能性があります。
しかし、送迎手当の財源をどう確保し、持続可能な仕組みにするのかという課題が残りました。
そこで、試行錯誤の末にたどり着いたのが、**「移動サービス」「IT技術を活用した配車システム」「クラウドファンディングを活用した地域活性化事業」**の3つを組み合わせた「道志村モデル」です。
なお、本事業の運営方法については、関東運輸局とも情報を共有しながら準備を進めています。
1.移動サービスの提供
NPO法人が運営主体となり、地域住民などの自家用車を活用した移動サービスを提供します。
通院や買い物だけでなく、子育て世代の送迎、外国人就労者の移動、地域活動や飲食店への訪問など、幅広い移動ニーズに対応することを目指します。
利用者の負担額は、村内移動が一律200円、村外移動が一律300円(いずれも1台1運行あたり)を予定しています。
2.IT技術を活用した配車システム
生成AIも活用して独自に開発した配車システムを活用し、利用者からの送迎依頼とドライバーの参加を効率的に結びつけます。
送迎依頼、配車、運行管理などをシステム化することで、運営に必要な人的負担を抑え、小規模な地域でも継続しやすい仕組みを目指します。
また、スマートフォンの操作に不慣れな高齢者にも利用しやすいよう、音声による送迎依頼など、新たな利用方法の開発にも取り組んでいます。
3.クラウドファンディングを活用した地域活性化事業
移動サービスを継続するためには、ドライバーへの送迎手当など、安定した運営財源の確保が欠かせません。
そこで、クラウドファンディングを活用し、村内外の支援者から資金を募るとともに、地域の飲食店や商店などの協力事業者にも参加していただく仕組みを構築します。
協力事業者との連携を通じて、移動サービスの利用が地域での消費や交流につながり、地域経済の活性化にも貢献することを目指します。
単なる寄付による資金調達にとどまらず、地域の事業者や全国の支援者が継続的に関わることで、移動サービスを支える新たな財源の仕組みづくりに挑戦します。
この3つを組み合わせることで、行政の財政負担にも、住民ボランティアの自己犠牲にも過度に依存しない、持続可能な地域の移動インフラの構築を目指します。
2027年4月からの実証実験
2027年4月から2028年3月までの1年間、道志村で移動サービスの実証実験を計画しています。
実証実験では、実際の利用を通じて、移動ニーズ、ドライバーの確保、運営費用、地域事業者との連携などを検証します。
利用者の負担額は、村内移動200円、村外移動300円を基本とし、1台1運行あたりのガソリン代・保険料などの実費の範囲内で運用する計画です。
この実証実験は、単に送迎サービスが成り立つかを確認するだけではありません。
人口減少が進む地域でも、住民・事業者・全国の支援者が協力することで、移動の仕組みを持続的に運営できるのか。
その可能性を検証することが大きな目的です。
クラウドファンディングの概要
実証実験の実現と、その後の継続的な運営基盤づくりに向けて、クラウドファンディングを実施します。
- プロジェクト名:「移動できる村」を未来へ。地域再生『道志村モデル』実証実験プロジェクト
- 実施団体:特定非営利活動法人 道志村移動サービス
- 実施期間:2026年11月15日~2027年1月15日
- 目標金額:200万円
- プラットフォーム:CAMPFIRE
- プロジェクトURL:https://camp-fire.jp/projects/959210/view
集まった資金は、移動サービスの実証運行に必要な費用、ドライバーへの送迎手当、システム運営、利用者への周知などに活用する計画です。
今回のクラウドファンディングは、資金を集めるだけでなく、全国の人々に地域交通の課題を知っていただき、道志村モデルの取り組みに参加していただく機会でもあります。
全国の地域へのメッセージ
人口減少は、これから多くの地域が直面する課題です。
人口が減り、地域の担い手が少なくなっても、そこに暮らす人々の生活は続きます。
その生活を支える移動の仕組みを、行政だけに任せるのでもなく、地域住民の善意だけに頼るのでもなく、社会全体で支えていくことはできないでしょうか。
道志村モデルは、まだ実証実験を始める段階の小さな挑戦です。
しかし、道志村で実現できる仕組みが見つかれば、同じような課題を抱える全国の地域にとって、一つの参考になる可能性があります。
「車がなくても生活できる道志村」から、「車がなくても生活できる地域」へ。
私たちは、道志村での実践を通じて、人口減少時代の新しい地域の支え合いの形を探っていきます。
特定非営利活動法人 道志村移動サービスについて
- 法人名:特定非営利活動法人 道志村移動サービス
- 理事長:荒木 茂
- 所在地:山梨県南都留郡道志村
- 活動理念:車がなくても生活できる道志村
- 主な活動:地域の移動手段の確保、移動サービスの仕組みづくり、地域事業者との連携、移動サービスのシステム開発など
- ホームページ:https://doshir413.org/
